近所に救急車がやってきた。
私も駆け寄ったのだが、グランドで遊んでいた小学生の女の子のグループもやってきた。
「こんな救急車、来たの見るが初めて!」
「何やら怖い!」
女の子達、恐る恐る肩を寄せ合うようにしてタンカーで運ばれてくる人を眺めていた。
すると一人が何と手を合わせたのだった。
「あぁ、ダメながや!」
さすが近くにいた女の人が、あわてて叱った。
「あんたら早すぎる!」
私も言った。
「あんたら、ちょっと黙っておられ、なんにも言われんな!」
布団に寝たまま運び出され、身動きもせず、素足が妙に白く、確かに死人が運ばれるようなシーンだった。
ちょっと前まで犬の散歩を、毎日しておられた人だ。
奥さんの話によると、朝から体調が悪く、様子が変で、そのうちに「ろれつ」が回らなくなったとのことだった。
このように救急車が来ることが珍しくはなくなってきた。
きょうは明るい時間だったから人もたくさん集まったのだが、大体は夜中が多い。
赤色灯がまぶしいくらいに辺りを照らす場面は、ほんとうに寒々となる。
働き盛りの若い人達が集まってきた団地だったが、今では10軒に7軒くらいが高齢者になってしまっている。
伴侶を亡くして、一人暮らしの家もかなりある。
きょうの晩酌は何だか、しみじみと老後のことを考えてしまうのだった。