朝、妻が何気なく言った。
「そろそろ昇さんの顔を見に行かなくってはいけないんじゃない!」
昇さんとは姉の旦那さんのこと。
食道がんと言われ春先から病院に入退院を繰り返していたが最近は家での看護生活だった。
私とは一回り違う世代の人。
妻の言葉に従ってお昼前に顔を見に行った。
静かに寝ていたので言葉も交わさなかったのだが…。
まさかそれが最後の別れだったとは思ってもみなかった。
夕方、亡くなったとの連絡を受けた。
お坊さんが来る前に姉がお経を唱えた。
それがものすごくよかった!
どんなエライ坊さんよりも感情のこもったお経だった。
これでいいんだ、と思った。
お経って言うものはそうなんだと。
人に感情が伝わらないお経なんて全く意味がないと思う。
兄も逝って、叔父さんも逝って、今度は義兄も逝って…。
もうあの世のほうが知ったものが多いのでは…。
「お前もそろそろ来いや!」
そう言って、みんなで手招きしているのではと思ったりする。
ほんとうに歳の行くのは早い。
もう70歳だ。
あと元気に生きても10年だろうか…。
なんだかわびしいなぁ…。