先日の氷見の帰り道のことだった。
国東橋で休憩しようと立ち寄ったら、先客がいた。
トイレから出てくる、その人の顔を見ると、よく知っている同級生だった。
「やぁ、久しぶり!」
当然、「おぉ!」と笑顔で跳ね返ってくると思い気や…。
首をかしげながら、
「え?誰やったかいね」
最近は会っていないが、若い頃はよく一緒に遊んだ仲だったので意外だった。
冗談でふざけているのかとも思ったが、そうでもない。
ほんとうに私のことを思いだせないのだった。
そう言えば彼は「パーキンソン病」だと聞いたのは、いつのことだったろうか。
指先が震える、とか言っていた。
塗装関係のアルバイトをしていたときに発症したようだったが因果関係はわからない。
まさか「パーキンソン病」が脳まで、おかしくするとは思わなかったが、間違いなく「痴呆」が始まっているようだ。
けっこう長い間、話していたが、それでも私を思いだせない…。
「同級生やったかいね?」
何だか、わびしくなってきてしまった…。
別れ際、自転車で去る私を追いかけるようにして、
「誰やったかいね?」
そう叫んでいる彼に、私は何故か名前を名乗ろうとはしなかったのだった。
「俺だよ!」と昔のことを話して思いださせてやればよかったのだろうか…。
何だか、そっとしてやりたい気持ちだった。