なにしろ男が大半の吹奏楽部というのが珍しい。
昔はそうだった。
ブラスバンドと言ったら男のクラブだったのに今では完全に逆転していて女の子のほうが多い。
中学の時、初めて女の子が「入部させてください!」と言ってやってきた。
今でも、その時のことをよく覚えている。
可愛い女の子、二人だった。
まさかの事態に、みんな仰天してしまい、全体会議のもと許可したのだった。
与えた楽器はピッコロとクラリネットだった。
ピッコロの女の子は特に小柄で可愛い子だった。
卒業して忘れかけていた頃、ある展示会で女の人に「先輩!」と声をかけられた。
なんと大きくきれいに成長したピッコロの女の子だった。
あの頃の自分は、何かと華やかな環境にあったように思う。
学校を休んでもクラブに行き、日曜日でも音楽室でトランペットを吹くのが楽しみだった。
先生にも褒められ、同級生にも「カッコいい!」なんて言われ、調子に乗っていたかもしれない。
自分でも一番上手だと思っていた…。
自分の音色に酔っていたのだろう。
高校に行って、それはもろくも挫折してしまった。
自分の器量というものを思い知らされたのだった。
きょうは黒服の学生服を着た生徒たちの演奏を聴いていて、つい50年ほど前の自分を思い起こしてしまった。
あの頃に戻ってみたい…。