柴野の千手観音様を拝んだあと赤丸の浅井神社に入ろうとしたら
「こぶし荘って、どこですか?」とご婦人に尋ねられる。
何でも「あんぽんたん」があるとか。
何だろう?「あんぽんたん」って。
ちょうどいいかもしれない、私も行こう!
こぶし荘に至る、坂道を息を切らしながら昇っているとご婦人の車が横を通り過ぎていった。
道案内が間違っていたかと心配していたのだが無事たどりついたようで安心する。
「あんぽんたん」の為か、いつになく館内は賑わっていた。
大広間をちらっと覗くと、たくさんの人が「あんぽんたん」の開演を今かと待っておられる。
とりあえずお風呂にはいることにする。
¥350のお風呂だが、庭も眺められて、なかなかいい雰囲気だ。
何と、先客にどこかで見かけた人がいる。
あっちも気がついたようで「さっさと風呂上がって、あんぽんたん見んなん!」
岩瀬の「鯰鉱泉」で出逢った「伏木の人」だった。
一見、恐い人のように見えるが(ヘアーカットが普通ではない)、話しをするとそうでもなく意外と人情がありそう。
何で私は、こんなような人と仲良くなれるのだろう?
「始まります!大広間にお集まり下さい!」
館内放送も流れてきたので、早々に大広間に行く。
どうやら大衆演劇みたいようで、あざやかな着物を着た人たちが舞台裏の控え室に見える。
真っ赤なドレスを着込んだ「ネエチャン」が廊下のソファーにいた。
「ワァーッ、べっぴんさん!」
しかしよく見ると、いい年頃だった。
伏木の人に「ワンカップか缶ビール、呑んでもいいかね?」と言ったら
「そりゃ、ダメやろう!こんなところは、おとなしくお茶でも飲んどれ!」
意外とまともな人なんだった。
まったく知らなかった「あんぽんたん」。
劇団ではなく、唄や踊り、マジックショーをやるアマチュアの団体だった。
昔、ヘルスセンターでこんなの見たって感じ。
いろんな趣味があるものだ。
出ている人は、全員ほとんど私よりもずっと年上の人ばっかり。
そんな人たちが、あでやかな衣装を身につけて唄ったり、踊ったり…。
姉妹だというお二人が日本舞踊を踊ったのだが、膝まづいた時にスムーズに立ち上がれず、その様が何ともおかしく笑いを誘ってしまった。
一番好評だったのが「バナナの叩き売り」
一月に入会したばかりの新人とか。
口上はイマイチだったが、付けひげがとれたり、モタモタしている姿がおもしろく、
伏木の人の声援もあって、なかなか好評だった。
テーブルにお茶があったが、やっぱり物足りなかった。
「伏木の人」が言った。
「今度来るときは、ペットボトルに入れ替えてこいや!」
ほんと、そうしよう!
次の公演はいつなんだろう?
これが決定的!
♪「酒持って来い!」 「あんた呑みなはれ…」