Y社長がやってくる。
日頃は作業服の社長がスーツを着てネクタイを締めている。
やっぱり正月だ!
ずっと昔、正月に彼の家に行ったら和服姿の彼が「おぉ、どっかに行って食事しよう!」と駅前の繁華街に行って御馳走になったことが今でも正月らしさの想い出として残っている。
高瀬神社にお詣りして来ようと言うことで我が家では軽くノンアルコールビールで乾杯して出かける。
高瀬神社、ちょうどきのう、妻とはなしをしていたところだった。
亡くなった義父が、よく高瀬神社に行きたいと言っていたのだった。
「一度、連れて行ってあげればよかったね」
そんな思いだったところに偶然にもY社長が誘ってくれて何か因縁を感じるのだった。
3日と言うのに高瀬神社は人でいっぱいだった。
さぞかし元旦はもっと混雑していたことだろう。
お札を頂いて帰る。
Y社長の家で一杯呑もうと言うことになって昔の友人に電話するが、なんと宮さんが入院していることがわかる。
ちょうどY社長が宮さんの顔色が悪く気にしていたと言っていたところだった。
厚生連に早速、見舞いに行く。
案内された部屋がなんと大先輩Hさんが入っていた個室部屋だった。
歩行も難しい状態なのに主従医から退院を迫われ、一生懸命に歩行訓練していたことを想い出してしまった。
宮さんは意外と元気だった。
インフルエンザの予防注射に行ったらその病院で「顔色がよくないから、大きな病院で検査を受けたほうがいい」と言われ厚生連で検査をしたら胃ガンだと判明したとのことだった。
そんな自覚症状もなかったと言う。
でもY社長は「おかしい」と思ったと言うから、やっぱりそれなりに何かが表に出ていたのだろう。
「だるい」とは思っていたが仕事の疲れだろうと思っていたとのことだった。
老いた両親がいるから気がかりで、寝ているわけにはいかないと言う。
万年青年と自他ともに認められるほどの元気な人だったのでショックな出来事だった。
早く元気になって復帰してほしいと願う。
病院から出て社長と一杯呑もうと言うことでF君も誘うとしたが何故か彼も体調が悪いと言う。
ふたりで買い物をして彼の家で「しゃぶしゃぶ」して大吟醸でとことん呑む。
もともと酒が弱い社長はすぐにダウンするが私は一升は空ける気で呑む。
彼も宮さんも私より二つ上、変なことから若いころからの長い付き合いだ。
彼の年代はすでに何人も亡くなってしまっており時のながれを感じてならない。
本来なら、この正月は彼にしてみれば一番親交の深かった絵描きの浜さんと過ごすべきだったことだろう。
何が起きてもおかしくない年代。
みんな、お互いに気を張って生きて行こう!