きょうは大変な日だった。
午前中、息子らしき男から電話。
何やら元気がなくボソボソ…。
思わず息子の名前をかけてしまったのが騒動の元。
「喉がおかしく病院に来たらポリープがあると言われた」
まずはこのことで心配をかえられ、こっちはあわてて妻に電話を替わった。
妻は落ち込んでいる息子に「ポリープにもいろいろあるから心配することはない」と言って励ましのことばをかけていた。
そのうちに急に話が「カバンが置き引きあってしまった」との話に変わった。
財布はもちろん、携帯も入っていたので今は公衆電話からかけているとのことだった。
携帯に電話すると番号が悪用される恐れがあるから絶対にしないようにと言う。
とにかく警察に届けを出しにいくから、と最初の電話は切れたのだった。
しばらくすると警察の遺失物センターなるところから電話がかかってきた。
電話の聞き取りが苦手なので妻が替わってとると財布がみつかったとのこと。
そして確認の為に、こちらの住所、名前などを聞かれ、うっかり言ってしまった。
警察署の名前をきいても応えず(本人が知っているからと)おかしいと思い、「ほんとうに警察の方ですか?」とさえ聞いた。
しかし、すごくやさしく丁寧に応対するので怪しまなかった。
念のため名前を聞くと「米倉」だと答えた。
電話を切ってしばらくすると、また息子らしき男から電話。
「実はカバンの中に会社の通帳と、きょう取引のある大事な書類が入っていて困っている。通帳が銀行で凍結されたのでどうしても取引のお金が必要だ」
いくら必要なのかと問うと「200万円送ってくれ!」とのこと。
「そんなもん送れん!」と言うと、とにかく今からでも取りに来るとさえ言う。
さすがこの時点でおかしいと思い「オレオレ詐欺でないけ?」と疑った。
一度切ったので次の電話では録音することにして待っていたら、かかってきた電話を取ると「おやじけ?」と最初に口にしたので間違いなくこれは息子でないと確信。
息子は決して「おやじ」なんて言わない、「お父さん」と言うからだ。
「録音を開始します」とアナウンスが流れると相手は慌てだした。
「何?これ、録音ってどういうこと?」
電波状態がおかしいとか何とか言って電話は切れたのだった。
決して携帯に電話するなと言っていたが決心して息子に電話すると元気な息子の声。
「お前今どこや?」
「会社やけど」
ほんとうにほっとした。
事情を話すと息子に怒られてしまった。
まさか家にこんな電話がかかってきて、まんまとひっかるなんて思ってもみなかった。
あまりにも息子の話しぶりと似ていた。
幸いお金まで取られることはなかったが、いろんな個人情報を教えてしまった。
交番に連絡すると警官二人がやってきて、いろいろ助言してもらった。
ちょうど他にも同じ「ポリープ」を使っての事案があったところだとのことだった。
お金を取りに来るかもしれないと5時ころまで家で待機されたが犯人は来なかった。
しばらくは戸締りを厳重にして電話もとらないようにとのことだった。
まったく恐ろしい世の中だ。
息子とも「山」「川」じゃないが合言葉を決めねば…。
そう孫たちとも。
最後に息子が言った。
「俺、実家に電話する時は標準語でなく高岡弁でしゃべっとる」
そうやった!
あんなきれいな言葉遣いではなかったのだった。