3日連続の強風注意報。
きのうの新湊の帰り道はずっと向かい風の悲惨なサイクリングだった。
さすが、きょうはそんな思いはしたくないと城端線を利用する。
たまにはこんな鉄道を利用するのも何かと刺激があってよろしい。
駅に早く着いて待合室にいると、何やら外で大声を発する人がいる。
この地区では何度か見かける障害者の若者だった。
何を言っているのかわからなかったが、繰り返し、繰り返し何か大きな声で叫んでいた。
城端線は連休ということもあって、満員だった。
このまま城端まで立っていなければと覚悟していたら砺波駅で大方の人が降りて行った。
やっぱり「チューリップフェアー」がお目当てのようだった。
静かになった車内に、大柄な若者が乗り込んできて、すぐに携帯を手にして大きな声で「何とかしろ!」
「何とかしろ!」
そう連発するので、みんな固まってしまった。
今にも暴れそうな雰囲気だったが、そのうちに聞き取れた言葉が意外だった。
「お母さん!餃子が食べたい!」
「餃子を食べなきゃ、変になりそう!」
さっきまで、横を向いていた人たちも、さすがに微笑んだ。
騒ぎに気が付いたワンマンカーの運転手もやってきて彼に近づいた。
一見、障害者とわかったのか過去にもそんなことがあったのか知らないが、普通の人と違うと思って、口に一本指を立てて「静かにしてね!」。
意外や若者は、きちんと正座するような感じで頭を下げ「すみません!」と言った。
身体が大きいから、みんな恐怖感を感じてしまったが意外や、純真な子供の姿に、もはや怖がることもなかった。
城端の町を歩いていると、またまた大きな声を発している彼に遭遇。
何やらマスコット人形を片手にスマホで写真を撮りまくっている。
またしても訳のわからない大きな声を発しているので人々は危険を感じて避けている。
ずっと沿道で缶ビールを呑みながら、そんな彼を観察していた私は、ひとりおかしくってならなく笑っていた。
彼の言いたいことがわかってきたのだった。
写真を撮るのに自分の構図があって、その前に人が入ってきたり物が動いたりしたらら気にくわないのだろう。
まったく純真な心の持ち主だと思う。
芸術家と言う人もこのタイプだろう。
ところで最近、自分も自転車を走らせながら何やらブツブツ独り言、あげくには大きな声で叫び散らす。
ひょっとしたら彼とは、いい友達になれるのかもしれない…。