富大吹奏楽部の定期演奏会を聞きにオーバードホールに出かける。
普段、家に籠もっている者には電車を使って近郊に出かけるというのは大変な刺激となる行動だ。
高岡駅でまずトラブった。
城端線を降りて「あいの風鉄道」に乗り換えるのだが何番ホームから出るのか電車の中でも案内がなかったので、とにかく旧北陸線ホームに急ぐ。
人もたくさんいたし、間違いなかろうと、すぐ来るはずの電車を待っていたのだが、なかなか来ない。
そのうちに向こうのホームに「泊まり行き」と書いた電車が停まっているのに気が付き、てっきりホームを間違えたのだと思って、急いで階段を上って、そのホームに駆け込み、電車のドアのボタンを押したら、中には誰もいなくガランとしていた。
何だかイヤな予感。
そう言えば「チンドン祭り」に行ったときも、こうだった。
すぐ乗り継ぐはずの電車に乗ったつもりなのに、いっこうに発車しない。
そのうちに向こう側のホームから電車が発車するのを見た。
運転手に問うと、この電車は一本後の電車で、今隣のホームから出たのがジャストタイムの富山行きだとのこと。
そうなら言ってくれればいいものを…。
まさにその悪夢の再現がなされようとしているのだった。
スピーカーから「富山行きが発車します!」。
見れば、さっきいたところのホームに、いつのまにやら電車が滑りこんでいるではないか。
「もうダメかも知れない」
そう思いながらも全力でダッシュ。
また階段を駆け上り、廊下を走る。
改札口の駅員が、何事かと振り返って見るほどの混乱ぶり。
ワンマンカーの運転手の「乗車の方は急いでください!」の声に、またあせる。
何とか間に合って電車に乗ったが、心臓がパクパクして呼吸が辛い。
マジで気分が悪くなってしまい息づかいも荒く、周りの人に何か言われわしないかと逆にきをもむ始末。
小杉を過ぎた頃にやっと平静になった。
富山駅はずいぶんと都会的になった。
東京でも迷わず改札に行けるのに何故か、この富山駅は案内が乏しいのか、同じような年輩の者が何人か、よくわからずにボトボト言いながら歩いた。
演奏会には少し時間があるので、せっかく富山に来たのだからと総曲輪に出かける。
お目当ては「大喜」のラーメン。
店の前に何やら人だかり。
駅にもいたのだが、どこかのTV局の撮影班だった。
まさか同じところに向かっていたとは。
ちょうどそのスターが入った後にスタッフの間を割って店に入る。
スタッフと勘違いされそうなので「オラは普通のお客やから!」と断ってラーメン小を注文。
ほんとうにまずいところに来てしまったものだ。
店の主は、その撮影の為にすっかり応対に追われている。
そのスターに、早速「大喜」のブラックラーメンが運ばれた。
私は店の入り口、スターは一番奥に座っているようだ。
「ショッカラ!」と何度もそのスターが大きな声を発した。
「ご飯、ご飯!」
笑い声があがる。
誰だろうかと奧の方を覗くと、どこかで見た顔。
どうやら午後のTVに出ている「みやね」みたかった。
ずっと待たされて、やっと出てきた、お楽しみのブラックラーメン。
結婚前、妻に連れられて入ったのが初めてだった。
「とっても、おいしいラーメンやから」
そう言われ期待していたのに、真っ黒の醤油味の麺は太く固く、ただただショッカラく、思わず大きな声で言ってしまった。
「こんなもん、ショッカラ食べれん!」「お湯さしてもらわんなん」
妻が必死になって私の袖をひっぱていた。
それなのに何故か、その味が忘れられず何度も来てしまう不思議な店だ。
今回も口に入れた瞬間、「みやね」ではないが「ショッカラ!」と大きな声を出したいくらいだった。
麺も固く、太く…、正直言って、最後までおいしいとは思わなかった。
¥750也。
黒田屋食堂のラーメン(¥400ほど)の方が、よっぽどおいしい。
でも忘れた頃に、またこの店に来るのだろうな…。
「みやね」がひょっとしたら横に来て話しかけて来るんではと思い、いろんなセリフを考えていたのだが、スタッフにもお代わりを注文して食べさせていた。
心の中では「こんなの、おいしいか?」って問いただしているんでは…。
店を出て、また駅に戻る。
電車を降りた時は北口がすぐで分かりやすかったのだが、今度はどうやってオーバードホールのある北口に行くのかよく分からず、入り口に立っていた警備員の人に聞く。
きょうは、この人に三度も尋ねた。
「トイレは?」「切符売り場は?」
そう切符を買うことさえ満足にできないのだった。
最初に行ったところは新幹線の売り場だった。
やっと普通電車の売り場に来たのだが何故かお目当ての切符が買えない…。
後ろに列がなかったから幸だったが、しばらく考え込んだ。
よく見ると枝線のボタンがあり、そこの該当する路線を押したらやっとお目当ての駅の切符が買えたのだった。出発駅で往復切符を買っておくべきだった。
そもそも北口で買うつもりだったのに警備員の人は北口では買えないかもしれないと言ったのだった。
帰りの切符も手に入れたので地下道を通って北口に。
長い地下道を歩いているうちに不安になってご婦人に「オーバードホールへは?」と聞くと戻った方が良いと言う。
戻った所で、広場みたいなところで休憩していた老人に再度確かめると「いや、このまま戻ると駅になるから先に進んだ方がエエ!」と言う。
またまた戻って階段を上がると、やっと駅裏に出たが、どこがオーバーホールなのか、どこが入り口なのかさっぱりわからず、またまた人に尋ねる。
今度は若い女性に聞くと、目の前のビルに入っていけばたどり着くと言ってくれた。
やっとオーバードホールに入るエスカレーターにたどり着き、左手を見ると、すぐそこが駅ではないか。
いったい何をしていたのだろうと笑ってしまう。
チケット売り場の女の人に、そんないきさつを愚痴っても笑ってもくれなかった。
肝心の演奏会だが、さすが大学生だ。
今まで聴いたことがない迫力な演奏で、苦労して聴きにきて、ほんとうに良かったなぁと思ったのだった。
終わったのが4時を回って、辺りはすこし薄暗くなっていた。
どこかで一杯、ひっかけて帰りたい気持ちだったが妻が心配するだろうと思い、北口の改札に入った。