「それじゃ旦那さん、お元気で…」
「あぁ、あんたも、お元気で!」
そう言って別れた、きのうの「足湯」で出会った女の人のことがずっと忘れられずにいた。
会った瞬間に「この人、どっかで会った覚えがある…」
私のいつもの悪い癖で、初めて会った人でも、ついそう思い込んでしまうことが多い。
そう言った現象を「デジャブ(既視感)」と言う。
私には、よくあることだ。
ある時は、「こんなこと以前にも確かにあったなぁ…、」
そう思っているうちに実際に想像していたことが現実となることさえあるから不思議だ。
別に超能力を持っているとは思っていない。
ただ、もう一つの自分と言うか、もうひとつの時間の流れみたいものがあるのでは…、
そう考えている。
きのうの女の人も忘れられず、ずっと過去を映画のシーンのように戻していたら、寝る直前に、なんと40数年前の私とその人の出会いのシーンにたどり着いた。
「四国から、伝手を頼って、この土地に来ました」
「金屋町の、ある鋳物工場のお世話になりました」
間違いない!
あの女の人は、やっぱり知っている人だった。
実家のすぐ近くに借家していたNさんに間違いない。
あの人も、まさかこんな白髪だらけの私を想像もできなかったのだろう。
何だか松本清張の「天城越え」のラストシーンを思いだすようだった。
「少年の頃に出会った女を能登に探し求め出会うシーン。
懐かしく女を見る主人公だが、女のほうは全く記憶から消え去ってしまっていた。」
思いだしてホッとしたが、自分の過去のシーンを脳裏で映像として投射していたら、いろんなシーンが出てきて、まさに大長編ドラマだった。
今回の「デジャブ」は何とか現実と結びつけることができたが、まだまだ私には不可解な「デジャブ」が多い。
夢の続きなのか、単なる思いすぎなのか、はたまた脳軟化症なのか…。