石下総合体育館の前でコーヒーを出しながら梨の皮をむいていたら報道機関らしき若い記者がやってきて「どこから来たのか?」「何でこんなことを(ボランティア活動)しようと思ったのか?」と質問攻めにあう。
逆に聞けば広島から来たTV局の者だとのことで広島での土砂災害の関連として取材中とのことだった。
しばらく話をしていて消えたと思ったら今度はビデオカメラを持ったスタッフとやってきた。
「おとうさん、もう一度、梨の皮をむいでくださいよ」
嫌とも言われず、またまた皮をむく。
意外と私は梨の皮をむくのは得意なので調子にのってしまう。
コーヒーと梨は被災者の人には大好評だった。
のどが痛いという人がいた。
コーヒーを三杯もお代わりしにこられ「私は朝、コーヒーを三杯飲む習慣なんです、ごめんなさいね」。
どうやら体育館の避難生活で風邪をひかれたようだった。
自宅は浸水してヘリコプターで救助されたとのことだった。
砂糖とミルクが少なくなったので、そばにいた「お父さん」に近くのコンビニに買いに行ってもらう。
なかなか帰ってこないので心配だったがニコニコして帰ってこられた。
「俺、こんな買い物したことなかったから、まごついちゃって…」
このお父さん、私と同年代って感じだったが実に陽気でおしゃべりだった。
コンビニから帰ってきてからはさらに、よくしゃべるようになった。
私の勝手な思いなのだが…、たぶんこの人、酒を買って呑んだのだろうと思う。
体育館の中には支援物資がいっぱいあって、飲み物食べ物には不自由しない。
しかしさすがアルコールだけは、いっさい置いていない。
私も寂しい夜を過ごしたのだった。
東北の地震の時も最初はアルコールの提供があったときは、みんな喜ばれたそうだが、それが元で喧嘩沙汰が増えたとのことでアルコールは一切禁止になったと聞く。
だけど少しくらいのアルコールは精神的にも安定剤となっていいとおもうのだが、やっぱりそれは飲んべえいの都合のいい理屈になるのだろうか。